トランプ政権:アメリカの略奪と搾取の系譜

 

スタンディングロックの闘い

二〇一六年一二月四日(日)の夕刻、 極寒のノースダコタ州スタンディングロック・スー族居留地に、分厚い防寒着に身を包んだ数千人もの退役軍人たちが全米各地から続々と到着していた。翌日五日に予期されていた警察隊による武力行使の場面で「人間の盾」を形成するためだ。

スー族が自治権を持つ聖地の破壊とミズーリ川流域の巨大な水源汚染をもたらす「ダコタ・アクセス・パイプライン」建設に抗議して、「ウオータープロテクター(水を守る人びと)」と名乗る部族メンバーや支持者たちは、約二年前から野営地を設けて地域を占拠し、工事を阻止してきた。それに対し、総工費三八億ドル以上とされるパイプライン事業を運営するエネルギー・トランスファー・パートナーシップ(ETP)社は、悪名高い傭兵企業ブラックウオーター社とも繋がりを持つセキュリティ企業タイガー・スワン・セキュリティ社を雇い、抵抗運動を監視する諜報工作や警察犬を使った住民攻撃を代行させていた。さらに、軍事武装をした警察隊(その多くが国境警備隊員でもある)が州政府の指示を受けてスタンディングロックの野営地を包囲し、ハイウェイや橋を遮断して物資の流通を阻止し、カミソリのようなワイヤを張り巡らせ、上空を飛行禁止領域に指定して報道取材手段を退けるなか、毎日のように丸腰の人びとに催涙弾を撃ち、氷点下35℃の深夜にウオーターキャノンで冷水を浴びせ凍死の脅威を強いていた。軍隊化した警察に撃たれ、腕の切断さえ危ぶまれた負傷者も出た。

元大統領候補、上院議員バーニー・サンダースは頻繁にオバマ大統領に工事中止を呼びかけ、米国議会に先住民の権利回復に取り組むことを訴え続けている。アル・ゴア元副大統領も先住民に対する残虐行為を糾弾する声明を出したが、ヒラリー・クリントンを始めとする「リベラル派」の著名な政治家たちの多くはなぜか沈黙を守ったままだ。主流メディアでもスタンディングロックに関する報道はごく稀で、一般米国市民の意識に触れる機会は皆無に等しい。

見通しの立たない過酷な状況にあえて乗り込んだ老若男女の退役軍人たちの中には、 太平洋戦争やベトナム戦争の戦火を生き延びた老齢の軍人や、若い反戦イラク帰還兵たちがいた。退役軍人でもあるハワイ州トルシー・ガバード下院議員やウェズリー・クラーク・ジュニア(著名な退役司令官クラーク大将の息子)、さらにコーネル・ウェスト、ナオミ・クライン、アントニア・ユーハウスなどの言論界の活動家たちもやってきた。翌日に備える作戦と司令系統を確認する集会で、兵士たちは非暴力不服従の誓いと共に、最悪の事態に備えて死ぬ覚悟を吐露した。「くだらない戦争で死ぬよりは、意味のある死を選びたい」

緊迫した四日の夜、陸軍工兵部隊はパイプラインの現行計画のルートでの工事を許可しないという声明を出した。五日に迫っていた強制立ち退きの危険は一時的に回避され、歓喜の声が上がった。少なくとも、次期大統領が就任する二〇一七年一月まで 一息つけるのではないか。

しかし、工事中止の発表にも関わらず、張り巡らされた交通遮断のワイヤやブロケードが撤去される気配はない。飛行禁止領域も解除されない。巨額の利権が絡むプロジェクトを投資家たちがそう簡単に諦めるはずはないとするのが妥当な見解だろう。次期大統領トランプもこの事業に投資している。

トランプのアドバイザーたちは、先住民部族の自治権を廃止し、わずかに残る居留地さえも完全に私有化することを提案している。先住民 テリトリーの私有化は植民地時代から入植者たちの究極的なゴールだった。一方、工事遅延はパイプライン事業にとってすでに四億五〇〇〇万ドル以上の損失となっており、今後も一カ月約八三〇〇万ドルのペースで負債が重なる。粘り強く工事遅延を維持することは有効な抵抗手段なのだ。さらに、スタンディングロック支援者たちは全米の大学や自治体の年金積立基金に働きかけ、ETP社に融資している巨大銀行ウェルズ・ファーゴから投資撤退を要求するキャンペーンを強化している。日本のみずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行を含む外国の銀行もETPに投資をしており、抗議の的となっている。

五日の夜、先住民部族と退役軍人が一堂に集まった儀式で起きたひとつの出来事が人びとを驚かせた。

「わたしたちはあなたの土地にやってきた。条約を結んではそれらを破り、皆さんが敬う丘から鉱物を盗み、聖なる山の山腹に大統領の顔を彫り込んだ(注1)。さらに土地を奪い続け、子供たちを連れ出し、創造主が与え賜うたあなたたちの言語さえも抹殺しようとした。わたしたちはあなたの土地を穢し、あらゆる方法であなたたちを傷つけた… … わたしたちは皆さんに謝るためにここに来ました。皆さんのお役に立てることなら何でもいたします。どうか許して下さい。」

そう述べると、ウェズリー・クラーク・ジュニアは、 ラコタ族の長老レオナルド・クロウドッグ(一九七三年のウンデッドニー占拠に参加したAIM(注2)メンバーの一人)の足元に跪いた。幾世代ものトラウマを鎮める涙が人びとの頬を濡らした。

正義とは、勇気とは、真実とは、何か。憲法や愛国の建前とかけ離れた政治を糺すためには、根本的な問いかけが必要であることを退役軍人たちは知っている。化石燃料経済。気候変動の行く末。国民の福祉や医療。企業資本と金融の論理に翻弄される国家の政策。略奪された先住民たちの国土と奴隷労働の搾取の上に築かれた米国の富。都市部の金融部門に凝縮された余剰価値を貪る1%と、富の公正な分配を要求する99%の対立。アメリカ合州国が掲げる連邦主義のUnitedの本質はどこにあるのか。

大統領選挙とその後の閣僚人事で右往左往する報道に隠され、スタンディングロックの闘いの展開は主流メディアからはほとんど見えない。その闇の中、 陸軍工兵部隊による工事中止声明の却下を求める訴訟が同じく一二月五日(月)にワシントンDCの連邦裁判所に提出され、九日(金)には裁定が行われるとの知らせが七日(水)の午後に入ってきた。その後の進展は聞こえてこないが、次期政権のエネルギー長官候補に、ダコタ・パイプライン事業投資会社の理事リック・ペリーの名前が挙がっている。

米国の内陸僻地で起きている抵抗の動向に耳を澄ませることは、市民運動の可能性と危機を再認識する足がかりとなるだろう。歴史の縮図から米国の今後の選択肢とダイナミズムが垣間見えるからだ。

 

正当化される露骨な搾取

スタンディングロックの闘いの対極に、ドナルド・トランプ大統領誕生という現象がある。トランプ当選の政治的背景については綿密にデータが分析され、不正選挙に関する調査や訴訟も進行している。一方、トランプ政権が何を実現しようとしているのかは、閣僚候補のリストを眺めるだけで 一目瞭然だ。

単刀直入に述べよう。次期政権は、あらゆる規制を緩和し、米国民主制度が培ってきたコモン(医療、教育、環境などの公共領域)を急速に私有化する企業独裁体制の確立を目指している。しかも、想定される抵抗運動の盛り上がりに備え、治安の名の下に自国民に銃口を向けることも厭わない残虐な軍事政策を標榜する軍人が閣僚の重要ポストに三人も含まれていることに注目する必要があるだろう。

米国憲法の建前(人民の、人民による、人民のための政府)が保証する基本的人権と企業資本が求める「利益の最大化」との間で戦われる熾烈な葛藤をめぐり、過去の共和・民主の二大政党陣営はそれぞれ「漸進的」アプローチで過剰な反動を回避してきた。しかし、トランプ政権は従来の政権とは一線を画し、民主政治の建前をかなぐり捨てて露骨な資本論理の究極的目標を暴力で短期間に実現する意向を露わにしている。

トランプは「既得権益の沼地に群がるロビイストを排する」というモットーを掲げ、TPPにも反対を表明して選挙戦を展開した。しかし、当選後に次々と開示される閣僚候補のほとんどが、白人至上主義、女性蔑視の復古主義的偏見に固執する白人男性であり、汚職や家庭内暴力のスキャンダルを引きずる政治家や、TPPを支持する金融界の既得権益者である。また、公職の経験もなく利益相反が甚だしい各界の大物小物もトランプとの面接に出入りしており、まさに泥まみれで餌箱に群がる豚のごとしである。

浮上した閣僚候補者のリストは変化が激しく、就任日まで確定しないかもしれない。現在知られているだけでも億万長者が一〇人、そのうちゴールドマン・サックス(以下GS)出身者が三人、そして強硬な軍事政策を支持する軍人が三人いる点は注目に値する。金融企業と軍部の融合は過去のファシズム体制の実現に大きな原動力となったことを忘れてはならない。

この人事の背景として注視されるべきもうひとつの問題は、金融業界との途方もない利益相反関係だ。トランプは、一二月現在で分かっているだけでもGSやドイツ銀行、中国銀行など国内外の金融機関に三〇億ドルにも上る借金があり、大統領としての決断にこれらの債権者の意向が多大な影響を及ぼすことは目に見えている。

 

 

閣僚の顔ぶれ(またはその有力候補)

副大統領:マイク・ペンス      インディアナ州知事。過激なキリスト教至上主義の極右思想を持ち、女性、ゲイ、移民の権利抑圧政策で名を馳せている。傭兵企業ブラックウオーター創設者エリック・プリンスが最大の選挙資金を供給している。 気候変動については過去に理性的理解を示していた時期もある。トランプが大統領の伝統的な職務に興味がなく、実務は保守強硬派のペンスに全面的に任せることが予想されているため、トランプよりも危険視されている。

国務省長官:レックス・ティラーソン                エクソン・モービルのCEO。エクソンは気候変動に関する科学的検証を抑圧・隠蔽してきたため、環境保護団体が複数の訴訟を起こしている。パナマ文書(租税回避の実態を暴く記録)の審査で、バハマに拠点を置くロシア・米国のオイル会社の幹部であることが暴露された。(ほぼ確定。デイビッド・ペトレイアス、ミット・ロムニー、ダナ・ローラバッカー、ジョン・ハンツマン[DCシンクタンク「アトランティックカウンシル」会長]など複数推薦)。

財務省長官:スティーブン・ムニューチン        元GSグループ幹部。住宅ローン融資銀行の運営で三万六〇〇〇世帯から住居を奪い「差押えマシン」として名を馳せた。たった27セントの負債を理由に九〇歳の老女をフロリダ州の住居から追い出したことで有名。

国防省長官:ジェイムズ・マティス退役大将                イラク戦争のファルージャ攻撃や、アブグレイブ収容所での拷問虐待の指導などで見せた残虐性から「狂犬」と呼ばれている。文民統制の決まりで、国防省長官は退役後七年以上経っている人物である必要があるため、二〇一三年に引退してから間もないマティスが議会の承認を得ることは難しいとされている。

司法省長官:ジェフ・セッションズ        アラバマ州上院議員。元検察官。KKK擁護など人種差別発言も多く、反移民的政策を支持し、米国内で生まれた者はすべて米国市民であるとする憲法修正一四条の廃止を求めている。投票権法にも強く反対してきた。

内務省長官:ライアン・ジンク                モンタナ州下院議員。気候変動否定主義者。国有地での鉱山採掘やフラッキング(シェールガスを抽出する水圧破砕法)を支持する。

商務省長官:ウィルバー・ロス                富裕な金融投資家。倒産した企業を安く買いたたき、雇用を海外に移し、海外の投資家に売って利益を得てきた。

労働省長官:アンドリュー・パズダー                ファーストフード・チェーン店(バーガー店ハーディーズその他)経営者。何度も残虐な家庭内暴力事件を起こしており、バーガー店の女性店員に性的虐待を強いてきたことでも有名。最低賃金15ドルに反対している。

保健社会福祉省長官:トム・プライス                ジョージア州下院議員。下院予算委員会議長であり、ティーパーティ党幹部会員。オバマケアに反対し、メディケアの私有化を支持。性教育、避妊薬や堕胎を認めず、米国家族計画連盟(Planned Parenthood)に対する国の補助金停止を求め、同性愛者の結婚や性的指向に基づく差別禁止法案に反対している。

エネルギー省長官:リック・ペリー              元テキサス州知事。二〇一一年に大統領候補に出馬した際、エネルギー省廃止を主張していた。ダコタ・パイプラインの理事。気候変動否定主義者。

ホワイトハウス法律顧問:ドナルド・マックガン 金権にまみれた選挙制度を確立することに大きな影響を与えた連邦選挙管理委員会の議長を務め、選挙資金制度の改革を阻止、企業からの制限なしの選挙献金を認めるシチズンユナイテッドの裁定に大きな影響を与えた。選挙汚職で辞任した共和党議員トム・ディレイの倫理顧問でもあった。

教育省長官:ベッツィ・デヴォス            公共教育の縮小と私営化を支持し、科学(特に進化論)教育を否定している。共和党へ多大な政治献金を行っている。ブラックウオーター設立者エリック・プリンスの妹。

環境保護局長官 スコット・プルイット            オクラホマ州の司法長官。気候変動否定主義者。化石燃料(石炭産業)企業の利害を守るために、環境保護や公衆保健の規制削減を目的に環境保護局に対する訴訟を起こした。

国土安全保障省長官:ジョン・ケリー大佐                    海兵隊退役軍人。元南部軍司令官としてグアンタナモ収容所を管理していた。ホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラに軍事資金をつぎ込み、中南米との国境問題についてオバマ大統領と対立した。国内領土も戦場として考えている。二〇一〇年に息子がアフガニスタンで戦死した。国土安全保障省の予算は急増しており、スタンディングロックで先住民を弾圧している武装軍は国境警備員である。

国務省副長官:ジョン・ボルトン(内部で反対者が多く、現在、未定。)

国家安全保障顧問:マイケル・フィン大将 ブッシュ政権時代のイラク戦争中に特殊作戦軍司令官スタンリー・マククリスタル大将の下で諜報高官を務めた。虐待や拷問で得た情報を元に民家への押し入り襲撃や先制攻撃などの作戦を展開し、イラク戦争での民間人殺害をエスカレートさせた。その後、アフガニスタン戦争で同様の戦略を展開してきた。

住宅・都市開発省長官:ベン・カーソン            引退した脳外科医。政治の経験ゼロ。気候変動否定主義者。子供の頃に公共住宅で暮らしたことがあるという理由でこの地位を提供されたが、実はそのような履歴は嘘だった。

中小企業局:リンダ・マクマホン            プロレス業界の大物。

大統領首席補佐官:ラインス・プリーブス        共和党全国委員会の会長。気候変動否定主義者。

CIA長官:マイク・ポンペオ                     気候変動否定主義者。

大統領首席戦略官・上級顧問:スティーブン・バノン                        元GS社勤務。ネオナチの煽動を行う「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」の会長、トランプ選挙参謀。白人至上主義者、人種差別、女性蔑視で知られる。気候変動否定主義者。

国家経済会議ディレクター:ゲーリー・コーン                        GS社プレジデント & COO

イスラエル大使:デビッド・フリードマン     極右の思想を持つ破産法の弁護士。国際法を無視し、イスラエルとパレスチナの平和共存を否定している。パレスチナ支持の活動に対する司法省による捜査を求めている。

 

 

従来の政権閣僚の人選では、公職の名目を守り、各担当領域の政策について国民の利益を代弁する前提が成り立つ人物が検討されてきた。トランプ政権の閣僚人事には、各担当領域における企業利益を最大限に代弁し、国民の権利を極度に抑圧する人物が名を連ねている。また、議会や諜報機関の公式の承認を必要としないまま大統領に大きな影響を及ぼす可能性のある各アドバイザーの地位に、米国憲法や国際法を無視する人物を多く配している点も懸念されている。

公益のマントをまとった「アメリカ優先」ではなく、むき出しの「巨大企業優先」の政治が見える。

 

 

惨敗から学ばない民主党

今回の選挙では、単に行政府だけではなく、上院、下院とも共和党が主導権を掌握した。一九二八年にフーバー大統領が当選した当時以来のことである(翌一九二九年に大恐慌が起きた)。さらに、現在全米三三州の知事が共和党であり、三二州の州議会で上院・下院とも共和党が支配権を握っている。

共和党の大統領候補が獲得した選挙代理人の数は一九九二年のブッシュ(父)大統領当選時の一六八人から次第に増大(九六年ドール:一五九、二〇〇〇年ブッシュ(子):二七一、〇四年ブッシュ(子)二期:二八六、〇八年マケイン:一七三、一二年ロムニー:二〇六、一六年トランプ:三〇六)してきた。共和党は過去二〇年以上をかけて統計データを分析し、自治体の政治環境をゲリマンダー(選挙で自党が有利になるように選挙区を改変すること)を行って整えることに力を入れた。特に、四年前の大統領選挙でロムニー候補が敗北して以来、かつて独壇場で戦略を披露していたカール・ローブのような目立った行動をする策士を表に出さず 、企業利権を代弁するロビイストの数を増やし、行政主導権回復のために静かに、地道に、周到な戦略をめぐらしてきた。

一方、民主党は共和党の牽引力に吸い込まれるように、企業ロビイストに依存する金権政治のダイナミズムに身を投じ、「中道」の軸を右へ右へとずらしていく妥協政策を続けてきたため、党員が去り、基盤となる支持層が枯渇し、オバマ政権下の過去八年間に全米の州議会で合計約九〇〇席もの議席を失った。民主党予備選挙では、バーニー・サンダースの先進的政策に惹かれた若者や無党派が新たに民主党に登録したが、党幹部は彼らを歓迎しなかった。

大統領選挙中にウィキリークスが開示したジョン・ポデスタ(民主党内の人選を仕切る大物。ヒラリー・クリントン選挙対策管理者)のメールによって、経済的エリート層が牛耳る民主党全国委員会(DNC)内部の深刻な腐敗の実態が衆目に晒された。民主党幹部は企業資本を握る富裕層の利害との距離が近く、庶民の生活感覚から乖離しており、優先政策項目は幹部同士の権力争いに翻弄されてきた。民主党大会では、サンダース陣営の圧力と尽力で先進的な民主党政策綱領が作成されたが、例えば、オイル企業の利害を守るDNCがフラッキング禁止項目を政策綱領から外したことは今後の民主党の行く手に暗い影を投げかけるだろう。

ウィスコンシン州などの激戦州で民主党支持者の投票を分析すると、地方自治体レベルの投票では民主党候補に投票しているのに、大統領候補の欄は空白にしたり、「ミッキーマウス」など架空の名前を記入したりする票が目立った。どうしてもクリントンに投票できなかった民主党有権者の苦渋の行動パターンだ。不正な工作でクリントンを民主党の大統領候補に祭り上げた党幹部には未だにこの惨敗から学ぶ姿勢が見られないため、「民主党には見込みがない」と匙を投げ脱退する党員もいる。また従来の民主党内の力関係に依存する大手労働組合の幹部も、今回の惨敗について内省する姿勢が薄く、今後内部からの突き上げが予測される。

現在、民主党を内部から改革するためにサンダースの推薦を得てDNC会長に立候補しているキース・エリソン下院議員(ミネソタ州)に対しても、党幹部陣営は対抗馬を複数擁立してエリソンの勢いを牽制している。

オバマ大統領は八年前に掲げた革新的公約を守ることができなかった。これは民主党が底辺の広い革新的勢力の声を吸い上げることを怠り、圧力を構築できなかったことが大きな要因だ。グアンタナモ収容所は閉鎖されず、ドローンによる無差別暗殺が拡大し合法化された。内部告発者の保護を掲げた公約も野放しだ。政府の透明性は悪化し、情報公開バックログは五五%も増加している。拷問を明確に否定せず、ブッシュ時代の愛国法を継承して米国民に対する監視体制を強化した。オバマの民主党政権下で肥大した軍産複合体の威力と、企業資本と国家の融合というファシズム体制がそのまま、無慈悲で貪欲な次期大統領へと引き継がれていく。

 

大統領の実務に興味のないトランプ

二〇一六年一一月八日、ほぼ二年にわたる米国大統領選の狂騒に終止符が打たれ、ドナルド・トランプ(共和)が当選した。トランプの勝利は八日の夕刻からすでに予測され、九日夜明け前にあっけなく確定した。

「ガラスの天井」を打ち破る初の女性大統領誕生を祝う主旨でニューヨークのガラス張りの建物に集まったヒラリー・クリントン(民主)の支持者たちがショックを隠しきれず、言葉を失う姿があちこちのテレビで放送されていた。表紙に「マダム・プレジデント」と銘打ち、クリントン大統領誕生を祝う『ニューズウィーク』誌特別記念号が前日七日に数千部も印刷され、八日の夜に主要都市の店頭に並ぶことが予定されていたが、陽の目を見ることなく撤収された。

トランプ大統領誕生を警告するデータは、民主党予備選挙でバーニー・サンダース候補が退いて以来、各方面から出ていた。二〇〇八年のオバマ当選を数学的分析で正しく予想し信頼を集めた天才統計学者ネイト・シルバーは、クリントン陣営に都合の悪いデータ分析結果を発表して民主党支持者から過酷な批判を受けていた。

ミシガン州出身で、ラストベルト(鉄鋼業など古い製造工場が廃れ地元経済が斜陽化した米国中西部・北東部の重工業地帯)の歴史をドキュメンタリー映画で記録してきたマイケル・ムーアも、従来から民主党の基盤だったミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州が激戦地になることを五月の時点で予言し、富裕層献金者にばかり時間を費やすクリントン陣営に対しもっと労働者階級のニーズに注意を払うよう警告していた。

一方、ロシアのハッカーがDNCやクリントンのメールサーバーに侵入し情報をウィキリークスやその他のネットメディアにリークしてトランプが勝利するように選挙を誘導したとする見解が流布している。しかし、ウィキリークスのジュリアン・アサンジは、DNCメールは内部からリークされたものであり、ロシアはウィキリークスへの情報提供には関与していないと発言してきた。情報提供者について言及しないというポリシーを貫いてきたウィキリークスにとっては異例の発言である。

さらに一二月一一日に、元ウズベキスタン英国大使のクレイグ・マーレイは、自分がワシントンDCに出向き、DNCの情報提供者に直接会ってデータを受け取り、ウィキリークスに渡したと証言した。マーレイによると、リークの動機は、予備選挙でクリントン陣営寄りのDNCがサンダースの選挙活動を不正に妨害し、金融街や 外国の政府から巨大な寄付をクリントンが受け取ったことを糾弾するためだったとしている。この情報提供者が誰なのかは、まだ特定されていない。

米国政府がスパイ目的のためにバックドアを意図的に開けたまま放置したことでハッキングの危険性を自ら増大させた誤算や、民主党幹部がセキュリティについて真剣な取り組みを怠った点については、スノウデンや情報活動家たちが長らく警告してきた。また、英米の諜報関係者やセキュリティ専門家が指摘しているように、 FBIとCIAとの間の主導権争いが表面化している側面も顕著であり、ロシア介入論による国内の世論誘導の意図も見逃せない 。政治的な動機でライバル諜報機関がプロパガンダ合戦を展開し、ワシントンポスト紙やニューヨークタイムズ紙など大手の報道機関に証拠のない矛盾する情報をリークしているため、誤報や訂正記事、政治家同士の糾弾や暴露発言が続き、報道環境の混乱が加速している。

トランプは、大統領当選前後の長い間、公式の記者会見を行っていない(執筆現在)。また、大統領になるための準備段階として重要な日例セキュリティブリーフィング(諜報部門が大統領に国家安全に関わる情報説明を行う)も欠席しており、就任後にもその時間を割くつもりがないことを表明している。政権確立後は副大統領が代わりにブリーフィングを受けるとのことだ。そして大統領就任後もトランプはテレビ番組「アプレンティス」の制作に関わり続けるとの意向を示している。

無知や偏見を取り繕おうともしない政治の門外漢が大統領に選ばれたことで、統治能力を前提としてきたエリート階級の建前にひびが入り、報道プロトコルも含め、通常運転の歯車が外れたことは事実だ。

 

クロスチェック:消えた有権者データベース

大統領選挙の最終的なデータ集計によると、クリントン候補は全米一般投票で約二八〇万票の差をつけてトランプに勝利している。トランプ勝利をもたらした選挙人制度は、元々、奴隷制で経済を維持していた南部州の不利を補うために考えられた制度だ。不公平な選挙人制度を廃止する動きは過去にも盛り上がったが、民主制の基盤である選挙制度の抜本的な見直しが必要である。

全米各州で様々な形の有権者弾圧や投票妨害が悪化していることも、トランプ勝利の大きな要因だった。ロシア介入論は実際に国内で起きている不正選挙の実態を過小評価または隠すために利用されていることを指摘しておきたい。

二〇一三年六月、 シェルビー・カウンティ対ホルダー( Shelby County v. Holder )訴訟(注3)で投票権法(注4)の中でも特に差別から有権者を保護してきたセクション5(自治体選挙区で投票に関する変更がある場合、司法長官または連邦裁判所に対し、その変更が差別的でないことを証明する必要がある)が憲法に違反すると連邦最高裁が裁定して以来、マイノリティ、特に黒人による投票権が縮小される傾向が進んでいた。今回の選挙はこの投票権法改悪後初めての大統領選だった。

ウィスコンシン州ではこの裁定に基づき、「有権者ID法」が二〇一六年に発効し、投票権法そのものがほぼ無効化された。二十世紀前半まで黒人差別が合法だった南部の州では、一九六五年まで黒人には出生証明書が発行されなかったため、ウィスコンシン州では他州の有権者ID、社会保障カード、運転免許証、軍人身分証明書などがあったとしても、出生証明書を持っていないために南部出身の黒人の多くが投票できなくなった 。

ネイション誌の調査によると、投票権法セクション5に基づいて差別的な投票変更が回避された件数は、一九六五年から二〇一三年までの期間で三〇〇〇件にも及ぶ。今回の大統領選挙では、全米で投票場が前回に比べて八六八カ所も減らされた。アリゾナ州マリコパ・カウンティでは三月の予備選挙で投票場が二〇〇カ所から六〇カ所に減らされ、有権者は五時間以上も待たなければ投票できなかった。一般労働者は仕事を休んで五時間も投票のために並ぶ余裕はないため、特に低所得者層や僻地の有権者に集中して投票できない人が大幅に増えた。

伝統的に民主党寄りの有権者が多いヒスパニックの人口が集中する地域では、投票用紙にスペイン語の表記がなかったり、以前は近くにあった投票場がなくなって遠くまででかけなければならなくなったりした。そのような地域では便利な交通機関が整備されているわけでもない。

ブッシュ(子)政権誕生の時点から米国の不正選挙の仕組みを綿密に調査してきたジャーナリスト、グレッグ・パラストの周到な調査により、全米の半数以上の州(三〇州)、特に民主党支持が確固としている州や激戦州を網羅する秘密の選挙工作が暴露された。若者層、黒人、ヒスパニック、アジア系の有権者をターゲットにして有権者名簿から名前を削除する 「Interstate Voter Registration Crosscheck Program(州間有権者登録相互参照プログラム:以下、「クロスチェック」と略)」だ 。このプログラムは、カンザス州の州務長官クリス・コーバックがここ数年密かに運営してきたプログラムで、共和党が過去一〇年間マイノリティ人口の選挙権を弾圧してきた様々の試みの中でも特に隠蔽度が高い。コーバックは、全米のムスリム市民の データベースを作成する「ムスリム登録簿」というソフトウェアの考案者でもある。二〇一四年の選挙でもパラストは「クロスチェック」の危険性を指摘していたが、二〇一六年になるまでは具体的に可視化できるデータ分析が揃わなかった。

その仕組みを説明してみよう。米国国勢調査局のデータを基にして、例えば、ある地域でワシントンという名前なら八九%は黒人、ヘルナンデスならば九四%がヒスパニック、キムなら九五%がアジア系などと統計的な分析がされている。このようなありふれた名前を持つ人種の集団を特定し、これらの人びとが複数の州で重複投票を行っているはずだという、根拠も証拠もない前提に基づき、無断かつ秘密裏に有権者登録データベースから名前を次々と削除しているのである。ミドルネームが違っても、綴りが違っても関係ない。投票場に行ってみたら自分の名前が登録されていなかったため投票できなかった、とか、投票用紙が送られてこなかった、などの被害が続々と報告されているが、当日にその場で抗議しても証拠となる書類を提出する時間もなく、有権者の投票権が無惨に否定されてしまったのだ。

クロスチェックの被害者の数は膨大で、一一月の時点で約一一〇万人の有色人種の有権者の名前が選挙の前に登録データベースから抹消されたことが確認されている。今後調査が進めば、その数字はさらに大きくなる見込みだ。

トランプ陣営は人種差別の体質を隠そうともしない。アドバイザーであるカール・ヒグビーは、「ムスリム登録簿」を正当化する発言で、ルーズベルト大統領が実施した「日本人強制収容所」の前例を法的根拠としている。

 

 

激戦地で多数の投票・開票マシンが一斉に「壊れる」不思議

大統領選挙の当日、一一月八日の午前中に、オハイオ州では重要な選挙区で投票マシンのセキュリティシールが破れており、監査機能がオフになっていることが発覚した。この機能は、投票一つひとつの画像を記録し、後に不正の疑惑があった場合に当初の投票を確認することができるプログラムで、厳重な監査が可能な機能だったが、その機能が無効になっていたため、証拠となる画像がすべて消されてしまっていた。パラストは即時にこのセキュリティ機能をオンにするよう州務長官ジョン・ハステッドに要求したが、「選挙の混乱を防ぐために」という口実でこの機能が無効になったまま選挙が終了した。

複数の州で、出口調査と当選結果にギャップがあるとか、投票数よりも得票数が多いなど、統計的に辻褄の合わないデータをめぐって複数の訴訟も起きている。共和党が州務長官であるすべての激戦州で出口調査と最終的な投票数に大きなギャップがあり、激戦州で出口調査と最終的な投票結果が合致したのは、民主党が開票プロセスを管理しているバージニア州だけであることが報告されている。

激戦州での票の数え直しを求める声が高まり、一一月末にグリーン党大統領候補ジル・スタインはミシガン州でのリカウント(票の数え直し)を呼びかけ、その資金五〇〇万ドルが三日で集まった。スタインはその後ペンシルバニア州、ウィスコンシン州でもリカウントの申請を行った。法律では一二月一三日までに得票数を確定しなければならない。トランプ陣営は訴訟を起こしてリカウントを妨害し、共和党の各州務長官は不正が疑われる投票マシンの検閲や監査を拒否した。人間の目と手を使う数え直しができなかった選挙区は多かった。ミシガン州デトロイトとフリントで実施された一〇日間のリカウントの結果は少数差でトランプ勝利となり、ペンシルバニア州ではリカウントは実施されずじまいとなった。ウィスコンシン州でもリカウントが途中で中止となった。しかし、リカウントを試みたことによって、黒人、ヒスパニック、アジア人の有権者の投票を抑圧する全米規模の不正選挙の仕組みが可視化された。

ミシガン州におけるトランプ対クリントンの得票差は一万七〇四票だったのに対し、クロスチェックで除去された有権者名の数は、四四万九九二二人だった。

人口の八二%が黒人で、人口統計データからクリントン支持が確固としていたミシガン州デトロイト市では、リカウントに抵抗する州政府が市内の票集計マシンのほとんど(八七機)が選挙日になぜか一斉に「壊れて」いたことを認めた。だから票の数え直しはできない、という主張を通して膨大な票数が虚空に消えた。

逆に言うと、このような「事故」がなければ、ミシガン州でトランプの勝利はありえなかったのであり、リカウントの要求がなければ、州政府がこの事実を隠していたことさえ有権者は知る由もなかっただろう。

パラストの調査によると、ミシガン州では 少なくとも二七〇万の票が様々な理由で数えられずに破棄・放棄されていた。例えば、投票用紙の折り目が曲がっている、郵便コードを書き忘れている、署名が何となくおかしい、塗りつぶさなければならないのに×印になっている、などの些細な理由で票が無効となり、一人一票の前提が踏みにじられた。 物理的に数え直すことができる票だけでも膨大な量だが、オハイオ州で発覚したような監査機能が無効になった投票マシンでは、投票記録そのものがないため、有権者の投票結果を確認して数え直す術は皆無である。その上に、クロスチェックで削除された有権者の数が加わる。

US Election Projectの一一月下旬時点での統計によると、今回の大統領選挙では全米人口の約一九・八%がクリントンに、一九・五%がトランプに、二・二%が他の候補者に投票し、二八・六%は何らかの事情(投票権のない永住者、移民、上記で述べた投票権を剥奪された有権者、囚人など)で投票できず、二九・九%は棄権した、ということになっている。証拠やデータが残らなかった投票数が全体的にどれだけの割合を占めるのかは誰にもわからない。選挙制度に対する不信が高まれば、将来の投票率も下がる危険があり、民主政治そのものの前提が根元から揺らいでいる。

一二月一六日(金)、オバマ大統領は年末最後の記者会見を行った。ロシアの介入や不正選挙に関しての質問があったが、スムーズで穏便な回答を返し、選挙の結果を受け入れて前に進むべきであると述べた。

一二月一九日(月)、選挙人団による公式の投票により、ドナルド・トランプは三〇四票を得て、四五代目の米国大統領となった。

全米の人口の約二〇%が生んだトランプ政権。米国は民主国家だと言えるだろうか。

 

抵抗の最前線は地方自治体

どれほど不人気な大統領でも、当選時から就任初期までの間は「ハネムーン」と呼ばれ、誰でも好感度が高い 。当選自体に問題の多かったジョージWブッシュでさえもハネムーンの好感度は+27で、人気のあったビル・クリントンは+40、バラク・オバマは+64という高い支持率を得て大統領の任務を始めた。しかし、ドナルド・トランプは就任さえしていない現在、好感度-21という悲惨な出発点に立っている。

大統領選挙が終わり、ショックの後しばらく鬱気味だったグラスルーツ勢力の人びとも少しずつ今後の戦略を考え始めた。ウェブでは「トランプと戦うにはどうしたらいいか」という主旨の記事が複数掲載されている。先進派勢力は基本的に二つの課題を認識している。一つは、地方自治体レベルから政治的な地盤を確立し直すこと。もう一つは、ボディポリテックス(肌の色や性別、見かけなど体の違いに関する定義に国家権力が介入する政治)と呼ばれる葛藤を昇華し、階級意識の啓蒙と構築に基づく運動を拡大すること。アメリカ民主政治の底力が試されている。

「トランプがNASAを閉鎖するのであれば、カリフォルニア州で独自に衛星を打ち上げてやろうじゃないか」。一二月一四日、サンフランシスコで開かれた地球物理学者の会議で、カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンは科学者たちに向かってそう豪語した。最近、トランプ政権移行チームからエネルギー省に対し、過去五年間に気候変動関連のプロジェクトに関わったり、国際会議に出席したりした職員の名前を求めるアンケート調査が送られ、エネルギー省が「ノー」をつきつけたばかりで、科学者の間では気候変動研究に関する予算が削られるのではないかという不安が広がっている。しかし、カリフォルニア州は連邦政府の資金援助がなくても独自の政策を実施できる経済力を持っており、教育の高い優秀な人材も豊富だ。

全米で最初に最低賃金一五ドルを制定したシアトル市では、当初騒がれた「企業が逃げる」という懸念を振り払い、失業率も三・四%に抑え込み、低収入労働者層の生活水準改善の良好な結果を出している。トランプは現在の連邦政府の最低賃金七・二五ドルを上げないと主張しており、新政権の労働省長官候補もこの運動に敵対する人選であるが、若者たちは負けていない。シアトルの成功に力づけられ、デトロイト、シカゴ、ヒューストンなどの都市レベルで、またワシントン州、アリゾナ州、コロラド州などの州レベルでそれぞれ独自に最低賃金一五ドルの実践が次々と試みられている。

ウィスコンシン州のマディソンで民主党から出馬し当選したマーク・ポカン下院議員は、同じくウィスコンシン出身で共和党の下院議長ポール・ライアンよりも得票数が四万票も多かっただけでなく、州内すべての選挙区で最高の得票数を獲得した。ポカン議員当選が特に注目に値するのは、彼の掲げた路線が穏健中道ではなく、労働者の権利、LGBTQの権利、女性の権利や公民権、気候変動、反戦などすべての領域で大胆な左派政策を打ち出して圧倒的な勝利を得たことである。今後民主党から出馬を考えている地方自治体の候補は、ポカンを見習い、勇敢な左派アジェンダを明確にして選挙戦を展開するべきであろう。ポカン議員は、今や革新議員団(一九九一年に、当時バーモント州下院議員だったバーニー・サンダースが創設)の副議長となり、トランプ政権に真正面から挑戦する意気込みを見せている。

二〇一六年大統領選挙で、米国の市民社会は多くを失った。同時にこれから獲得していくべき政策項目と闘いの展望もはっきりと浮かび上がっている。ファイト!

 

 

 

(1)ラシュモア山。大統領の顔を聖なる山に彫ることは、先住民にとっては陵辱的行為。ノースダコタ州の観光地になっている。

(2)アメリカン・インディアン・ムーブメント(AIM)。警察の暴力や司法の差別から都会のネイティブ人口の公民権を守るために一九六九年にミネソタ州で結成された。アルカトラズ島やウンデッドニーの占拠行動、全米横断行進(ロングウォーク)などいくつもの大きな抗議活動を組織し、米国の国家権力が踏みにじってきた先住民の権利奪回を訴えてきた。六〇年代のブラックパンサーやヤングロードのリーダーたちとの密接な連帯や交流は、抵抗運動の理論的根拠を磨き、米国の公民権運動の原動力となってきた 。

注3:Shelby County v. Holder:白人の多い郊外選挙区であるアラバマ州シェルビー・カウンティが司法長官ホルダーに対して起こした訴訟。投票権法で選挙区の範囲を計算する計算式に関するセクション4(b)に言及することによって実質的にセクション5を無効にした。

注4:投票権法:一九六五年に成立。人種や肌の色の違いによって投票権を侵害することがあってはならないことを定めた連邦法。

 

[初出:月刊『世界』2017年2月号]

 

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